うちの父親は現在植物人間状態です。
まばたきをして目は動くけど、物言わず身体も動かせません。
意識がない状態なので、目の前で話し掛けても稀にあくびをしてはすぐに眠ろうとしてしまいます。
確実に生きてはいるんだけど、もはやそこにかつての人格は存在しません。
まるで生まれたばかりの赤ちゃんのようです。
いや、泣いたり笑ったり訴えたり何もできないから赤さん以下です。
これを医学用語的に意識障害または植物状態と呼ぶそうです。
ラーメンマンで知った植物人間という恐ろしさ
「植物人間」というワード自体は自分が子供の頃から知っておりました。
なにしろものすごいインパクトでしたからね。
僕が小学三年生の時でした。
当時「キン肉マン」が大ブームでして、ちょうど僕がアニメを見始めた時にやっていたのが、第二回超人オリンピックの準決勝第二戦ウォーズマン対ラーメンマンの金網デスマッチでした。
あの頃ウォーズマンは強かった
実力者のラーメンマンが新鋭ウォーズマンに終始おされる展開で、ベアークローにより傷だらけとなったラーメンマンは試合を見ているキン肉マンにせめて決勝での戦いのヒントになるべくウォーズマン攻略法を模索しながら起死回生を狙いますが、最後は場外でスクリュードライバーの餌食となります。
ベアークロー・スクリュードライバーはトラウマもの
ゴングを手に取り一度はベアークローを受け止めたラーメンマンですが、ベアークロー(ウォーズマンの手の甲から飛び出す四本の刃)は回転式で、スクリュードライバーとなって盾になっていたゴングを突き破り、ラーメンマンのこめかみを突き刺すのでした。飛び散る血飛沫と絶叫して倒れるラーメンマン。
作中で最も好きな対決回にして、最大級のトラウマを埋め込まれたものです。
↓ コミックスだと第8巻に収録されてます(懐かしい)
キン肉マン対ウォーズマン
鉄の爪(ベアークロー)でこめかみに穴が開いたラーメンマンは、その後植物人間となってしまいます。
ラーメンマンを車椅子に乗せて介護するブロッケンJrが仇をとってくれ!とキン肉マンに発破をかけます。(ブロッケンは父親をラーメンマンに試合中殺されている関係性なのに準々決勝での戦いにて雪解けする)
しかしキン肉マンは変わり果てた物言わぬラーメンマンの姿に号泣し、ウォーズマンにビビって逃走を図りますが、ラーメンマンからの天の声に導かれるようにして、決勝のリングに上がるのです。
そして戦いのクライマックス、ウォーズマンのパロスペシャルにダウン寸前のキン肉マンを窮地から蘇らせたのもまた、会場で無言で観戦している車椅子に座ったラーメンマンからなる天の声だった‥!
体勢を逆転させてキン肉バスターでウォーズマンに勝利して優勝したキン肉マンは、勝因はラーメンマンだと語るのでした。
モンゴルマスク
その後ラーメンマンはドクターボンベが作ったモンゴルマスクを被ることでかつての動きを完全に取り戻し、ここぞという時に助けに加わります。
タッグ編でヘルミッショネルズのマスク狩り(クロスボンバー)にあってマスクを剥ぎ取られた時に正体がさらされるのですが、マスクを失くしたラーメンマンは再び言語障害となり「あうぅ‥」としか言わずのたうちまわります。
しかしその後ドクターボンベによる新たな改良で、マスクなしで傷口部分のヘッドギア装着だけでよくなり、再び素顔のラーメンマンとして堂々とキン肉マンを助太刀するのでした。
みんなラーメンマンが好きだった
キン肉マンに出てくる超人キャラクターの中でダントツに人気があったのがラーメンマンでして、逆張りひねくれ野郎の私でもやっぱりラーメンマンが一番好きでした。
理由はなんといっても絵に描きやすいから!
次にウォーズマンが人気だったのも同様の理由といえる。
逆にテリーマンが不人気だったのは小学生が絵に描きにくかったからだと推測。
もちろんここぞという時にだけ登場しておいしい所をかっさらって再び消えていくというレア感が魅力だったことも間違いない。
あとやっぱ子供はラーメンが好きですからね、大人もか。
ラーメンマンに学ぶ植物人間の実態
で、何が言いたかったのかと申しますと、ラーメンマンによって植物人間という状態の悲惨さを子供ながらに知っていたということです。
もう植物人間っていうワードがかなり怖いですよね。
そしてその実態を知ると尚更恐ろしく感じたものです。
動けない、喋れない、感じない、考えない‥。
だけどただ、生きているというだけ。
植物のように。
でも作中ラーメンマンは何度も復活します。
金網のトラウマすら闘いを重ねることで克服します。
もちろんこれは漫画だからですけども。
実際は植物人間となった人間は再起不能で余命も僅かです。
穏やかな表情で生きてるように見えるけど、そこに人格が宿っていないのであればそれはもはや肉体が死んでないだけで、魂は抜けてしまっているようなものです。
見ていると悲しくなります。
でも痛みから解放されて良かったね、とも思います。
父とはもう二度と永久に話せないのかと思うと、後悔がドッと押し寄せます。
アニメのキン肉マンの下品なキャラクターに笑っていた、かつての父の年齢すら越えてしまった現在の僕だけど、いつしか父の声をハッキリと感じ取れる日がくることを願ってます。
ラーメンマンに勇気をもらったキン肉マンのように。