彼が亡くなって今日で17年、18周忌を迎える。
華倫変とは今から20年以上前にヤンマガで読み切りを何本か掲載した後に短期集中連載を経て単行本を二冊(カリクラ・上下巻)出してそのままメジャーから消えて太田出版系でひっそり描いてた程度の知る人ぞ知る非常にカルトなマイナー漫画家である。
不世出のマンガ家・華倫変について語る
そして僕が生涯唯一ファンレターを出した作家でもある。
まだ連載もしてない駆け出しの新人だった華倫変の読み切りを数作読んだだけで僕はこの人のファンになり、本誌での連載を強く望んだ。
とにかくインパクトがあった。
ひと言で言うとガロ系なのだが、当時マイナー系の漫画を知らなかった自分としてはこうゆう作風やタッチは衝撃的で、何よりヤンマガ系でアシスタントを始めた頃の自分にとっては華倫変の漫画は希望の光りだった。
こんな下手な絵でも、こんな病んだ内容でも受け入れられるんだという意味でだがw
憧れの華倫変と会った!
それで年末の講談社のパーティーでめでたく対面する事が出来て、本人と直接二言三言会話をすることができた。
僕がファンである事を告げると彼は「他にはどんな作家が好きですか?」と物腰柔らかな丁寧な口調で訊いてきて、僕が「ヤンマガだと永野のりこさんとか‥」と答えると「あぁ、僕も好きで以前サイン頼んだらすごい細かく書いてくれて・・本当にいい人ですよ」といった感じだった。
その後色紙もないのに永野のりこ先生にも何処の馬の骨かも判らぬただのアシの分際であつかましくも話しかけて、サイン色紙を持ってなかったので会場の抽選券の裏に絵を頼んだらその場にしゃがみこんで丁寧に描いてくれたのも良い思い出だが、本題とずれてくるので話を戻そう。
確かそれきっかけでその直後にファンレターというか伝えたい事を書いて彼に送って、そしてまた一年後のパーティーで再会を果たした。
僕を見るなり彼は「手紙どうも」と覚えていてくれて、僕は勢い余って憧れの異性に告白するような感じで「友達になりたいんで携帯番号教えてください!」と非常識にも突然言ってしまった。
すると彼は「ボク携帯持ってないんで(97年当時)自宅のでよければ・・」となんと自宅の番号を教えてくれたのだが、大阪の番号であったのでまだ上京してない事を知り、友達のように遊ぶ事はできないのか‥とガックリして結局一度かけて繋がらなくてそれっきりという関係に終わった。
つまり彼とは二回会って数分話しただけだ。
だけど好きな作家とならそれでも充分な一瞬だろう。
華倫変の実像
なんで僕がそこまで彼に執着したかというと同い年だったからというのもあった。
同い年なのに彼は僕より全然前に居る人で、そして何より奇才と呼ぶに相応しい程の作家性があった。
そしてダメ人間の性癖や習性や格好を描いてる人なのに華倫変自身は予想に反してスマートな美青年だったのだ!
そこが一番裏切られた感を受けたし、当時彼は大学を出たばかりだか卒業間近だかで、「漫画なんて将来性ないから企業に就職しようと思ってる」なんてぶちまけやがったのでえらく僕は落ち込んだ。
だってすでにデビューしてる天才がそんな事言うんだよ?!
しかも社会不適応の不器用なダメ人間を描いてる作者が普通に大学出て就職考えてるようなちゃっかりした奴だったなんて。
やっぱ頭いいんだなって思ったし、変な世界を描く人に限って常識的な価値観を持ってたりするもんだよなって冷静に考えて納得もした。
華倫変ショック
そんなわけで華倫変は漫画界から姿を消しても普通に働いて生きてるもんだと思っていたし、頭も顔も良い彼なら生きることも容易いもんだと思っていたので、自殺なんてしないだろうと思っていたからさ、死んでたと知った時は驚いたよ。
公式には心不全と書かれてるけど、若さと描いてきた漫画を考えたら限りなく自殺に近いと邪推せずにはいられない。
あとすげーアルコール中毒だったらしいからそれもあるのかな?
とにかく自分と同い年で、しかも唯一ファンレターを出した作家で、直接会って話した事のある彼が、僕の知らない間にとっくのとうに亡くなっていたという事実を、死後二年経過してから知った当初ショックになりながらに綴った覚え書きを今こうして改めてアップした次第であるが、今でもしょっちゅう「カリクラ」を取り出して拝読して見ては、己の創作意欲を掻き立てる特効薬に使っているだけに、惜しいというか残念だ。
それにしても後味悪い。
まるで彼の漫画の読後感のようだ。
P.S.
華倫変は生前自身のHPで「うつ病は治る!」と強く主張しておりました。
でも彼は多量のアルコールで鬱を誤魔化して、結果生きる事に疲れきってしまいました。
繊細過ぎたんだと思います。
華倫変の残した作品は少ないですが、日々虚無感にやられてしまいそうな人々の心にスッと溶け込むようなシニカルな癒しが彼の作品には内包されてる気がします。
が、断じてオススメはしませんw